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研究キーワード:昆虫・分類・系統・多様性・地域ファウナ

◇昆虫は地球上で最も繁栄した生物で、その中でもカブトムシやクワガタムシに代表される甲虫の仲間(=甲虫目)は最大の種数を含んでいます。私の研究しているハネカクシは、甲虫目内のひとつの科です。

◇ハネカクシは現在60,000種を超える種が知られており、甲虫目に留まらずあらゆる動物のなかで最も多くの種を含んでいる科とされます。生態も著しく多様で、水中を除く陸上のありとあらゆる環境に進出して適応しているといっても過言ではありません。このように、ハネカクシは単一の分類群における著しい多様性獲得の事例として、非常に興味深い生物です。しかし、その多様性の全貌は未だ明らかではなく、まだまだ多くの新種(未記載種)の発見が予想されます。

◇私は、ハネカクシ科甲虫の分類学と系統学を主軸に、生態学や進化学的な観点も取り入れながら研究を行っています。これにより、多様性の解明に向けた基盤を構築するとともに、その実態に迫りたいと思っています。

◇現在、広島県庄原市に在住し、比和自然科学博物館の客員研究員として活動しています。同館のテーマである「中国山地の自然」に関連し、中国地方の昆虫相解明のための調査・研究にも取り組んでいます。

研究1:オオキバハネカクシの自然史

​◇オオキバハネカクシ亜科は世界で130種ほどが知られる、ハネカクシ科内では比較的小さなグループです。体が小さく、いわば「地味」な種が圧倒的多数のハネカクシ科において、発達した大顎と色彩豊かな体色、大きな体サイズと、「派手」で特徴的なグループです。本亜科はすべての種が菌食性と考えられ、一部の種では雌による子の保護が行われることも明らかになっており、生態的に興味深いグループでもあります。また、キノコの豊かな森林が生息に不可欠であることから、環境指標生物としても重要と考えられます。
◇従来、色彩に頼った種分類が行われてきたものの、色彩は同種内で変異に富むことから、分類形質として有用とはいえません。熱帯アジア地域では100年ほど前に多くの種が記載されていますが、現代的な視点での包括的な再検討が行われておらず、多くの種の正体がよく分からない状況にあります。本亜科の正確な種多様性の把握のため、分類学的な研究に取り組んでいます。また、特に日本産種を対象にキノコとの関係や、生活史などの研究も行っています。

 

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オオキバハネカクシ Oxyporus japonicus​
 

研究2:日本を中心としたアジア地域のハネカクシ科甲虫の多様性解明

​◇先の通り、ハネカクシの多様性の全貌は未だ明らかではなく、まだまだ多くの新種(未記載種)の発見が予想されます。日本とアジアのハネカクシに関する研究はこの数十年で急速に進展しましたが、最も解明が進んでいると考えられる日本においても、例年少なくない数の新種が記載されています。亜熱帯~熱帯アジアに目を向けると、その高い生物多様性を考慮すれば、現在の解明度は著しく低いと考えられます。一方で、人間活動の影響によって自然環境が急速に変化し、多くの生物の存続基盤が脆弱化しているなか、「どこにどのような生物がいるか」という生物多様性情報の把握は急務です。分類学的な研究を通じて、この地域のハネカクシの多様性解明に向けた基盤を構築するとともに、その実態に迫りたいと思っています。

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Eupiestus temporalis Fauvel
 

研究3:中国地方の昆虫相解明

​◇中国地方を東西に貫く中国山地にはアオカタビロオサムシやカシワアカシジミ、カラフトゴマフトビケラなど、東北日本に分布している種が飛び石的に分布している例が少なからずあります。また、ヒロオビミドリシジミやウスイロヒョウモンモドキに代表される、この地域に固有の種も存在しています。このように、独特の豊かな生物相が形成されていると考えられる非常に興味深い地域でありながら、これまで調査が十分に行われてきたとは言い難い状況です。一方、近年のシカの増加により、中国山地の多くの地域で森林環境に深刻な影響が出ています。幸い、広島県北東部の比婆山連峰から、鳥取と岡山の両県にまたがる大山・蒜山地域にかけた中国山地中央部には、現在も良好な森林環境が残されています。この地域を中心に、協力者とともに中国地方各地で精力的な調査を行っており、未来への資産となる標本の確保と博物館への蓄積を進めています。同時に、分布上重要な種に関しては学術誌へ発表し、情報の公表を行っています。

​◇本研究は研究2とも大きく関係しており、この地域のハネカクシの記載分類を進めています。

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